撮影の基本設定

写真撮影には被写体の選択から露出やシャッタースピードなど撮影の設定,撮影,現像までさまざまな段階がありますが,ここでは撮影の設定に関わる問題について考えてみましょう.

写真を撮ること自体は簡単で,ただシャッターボタンを押せば何らかの写真は撮れます.しかし,撮影の設定を様々に変更することで,表現にバリエーションを持たせることができ,それが一つの「写真撮影の技術」であるといえます.芸術的表現云々の前に,まずある程度はこれらの設定の意味と仕方を覚えなくてはいけません.撮影者が設定する項目はたくさんありますが,ここでは主に絞り,シャッタースピード,焦点距離,ISO感度の4つについておさらいします.

つづいて,これら設定項目同士の関係がどういう仕組みから成り立っているのか,「露出(写真の明るさ)」と「被写界深度(ピントのあっている範囲)」の観点から考えていきましょう.さらに,デジタルカメラで特に注目される「センサーサイズ」がこれにどう関わっていくかにも注目したいと思います.

絞り,シャッタースピード,ISO感度,焦点距離

これら4項目の設定はいずれも大きくするか小さくするかで行います.難しいのは,それによって起こる変化が1つではなく,複数の影響をもたらすことです.下記に簡単にまとめます.

絞り

 絞りを開くと写真が明るくなり,ピントが合う範囲が狭くなる.

 絞りを絞ると写真が暗くなり,ピントが合う範囲が広くなる.

シャッタースピード

 シャッタースピードを速くすると写真が暗くなり,ブレにくくなる.

 シャッタースピードを遅くすると写真が明るくなり,ブレやすくなる.

ISO感度

 ISO感度が高いと写真が明るくなるが,ノイズが増える.

 ISO感度が低いと写真が暗くなるが,ノイズが減る.

焦点距離

 焦点距離が短いと被写体は小さく写り,遠近感(パースペクティブ)が強調される.ピントが合う範囲が広くなる(被写界深度が深くなる).

 焦点距離が長いと被写体は大きく写り,遠近感が抑えられる.ピントが合う範囲が狭くなる(被写界深度が浅くなる).

絞り,シャッタースピード,ISO感度の相互関係

もしこれらの設定がそれぞれ完全に独立していたら話はすごく簡単でした.写真の明るさ,ピントのあっている範囲などを個別に好きな程度に調整できたらとても便利だったと思います.ところが実際には,上記の要素それぞれがお互いに関わり合っているので,撮りたい写真をイメージしながらバランスを考えて,それぞれ調節する必要があります.

例として薄暗い環境で動く被写体を撮る,例えば屋内でネコの写真を撮ることを考えましょう.

  1. まずネコと背景のバランス,画面上のネコの大きさを考えて構図を作り,焦点距離と自分の位置を決めたとします.
  2. ネコは動き回るので,シャッタースピードを上げないと大きくブレてしまいます.
  3. シャッタースピードをあげると,露出が落ちる(写真が暗くなる)ので,逆に絞りを開いて,露出を確保しなくてはなりません.
  4. すると今度は絞りを開いたことによって被写界深度が浅くなってしまい,ピントを上手く合わせるのが難しくなります.
  5. そこで絞りを開く代わりにISO感度を上げると,絞りをある程度絞ってピントを合いやすく,かつシャッタースピードを速くしてブレにくくできますが,写真にノイズが乗りやすくなります.

これらのバランスを考えて,色々な設定を行う必要があるのです.

これらの設定項目は,焦点距離を除いてすべて露出に関わっています.そこで,次の章では露出についてもう少し詳しく解説します.

Riding Nowhere

どうして写真には、ピントが合っている部分とぼけている部分があるんだろう?

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